先日とある人から、面白いことを聞きました。
そのとある人とは、ISOの審査官でした。
ISOは国際標準化機構 (International Organization for Standardization) の略称です。
ISOは、スイスのジュネーブに本部を置く、商品やサービスに関する国際的な標準(規格)を策定・発行している非政府組織です。
そしてISOの審査官は、その規格通りに実務が行われているかどうかを確かめるために、企業を訪問して審査を行うのです。
そこでとある企業を訪問した際に、あいさつが素晴らしい会社があったそうです。
そこで、次のような面白いコメントをしたのです。
それは、あいさつが良いということは、もちろんそれ自体が素晴らしいことなのですが、セキュリティーという観点においても、抑止力として素晴らしい効果があるのです。
あいさつがセキュリティーという観点において抑止力になるとは、どういうことでしょうか?
つまり、こういうことです。
工場を保有している会社があったとします。
事務所には玄関がありますが、一般的な中小企業であれば、工場には自由に入れるようになっています。
もちろん勝手にその企業の敷地に入ることはいけないのですが、営業中は門が閉まっているなどの物理的な弊害がないという意味です。
物理的な弊害がないということは、不審者が入ろうと思えば入れてしまうということです。
しかしそんな時に、その不審者を見つけた社員が次のような声をかけたとしたらどうでしょうか?
- こんにちは
- いらっしゃいませ
- 何か御用ですか?
- 何かお探しですか?
- 当社の誰かとお約束ですか?
もしこのような声をかけられると、不審者は「あっ自分の存在がこの人に知れてしまった」という認識を持つでしょう。
そうなると、今後何か悪さを働こうと思っていたとしても、自分が疑われてしまったらどうしようと警戒するでしょう。
しかし、あいさつがなかったらどうでしょうか?
これも不審者の立場に立ってみると、簡単なことです。
- 自分の存在はまだ誰にも知られていない。
- 自分の顔は誰にも見られていない。
- もし存在に気づかれても、後で自分を特定することはできない。
このように考えると、あいさつはセキュリティーという観点においても大切だと納得ができました。
コミュニケーションおいては、相手の立場に立つことが基本です。
詳しくはこちら「相手の立場に立って考える人と考えられない人」をご覧ください。
企業だけでなく、学校をイメージするとさらに分かりやすいかもしれません。
通常は学校にも門があるかと思いますが、授業中は空いていて、鍵がかかっていることもほとんどないでしょう。
つまり、不審者がその敷地に入ることは決して難しくないのです。
しかしそんな時に、その不審者を見かけた先生や生徒が、もし元気なあいさつをしたとしたら、その不審者は「自分の存在を覚えられてしまった」という認識を持ち、何か悪事を働こうとしても、それをためらってしまうかもしれません。
コミュニケーション能力の基本でもある「問いかけ」の中でも、最も簡単にできることが「あいさつ」なのです。
このようにたかが「あいさつ」ですが、されど「あいさつ」であり、あいさつはセキュリティーという観点においても、抑止力として素晴らしい効果があるのです。
コミュニケーション能力の基本については、こちらもぜひご覧ください。

