人とコミュニケーションを図る中で、その人の気持ちがひしひしと伝わってくることってありませんか?
その要因としては、声の大きさや出し方、言葉の選び方、さらにその人の表情や仕草、そして何よりもその場の雰囲気などが影響しているかもしれません。
だから人間に感性という能力があるのだと思いますが、それを磨いていくことが大切なのだと日々感じています。
しかし逆に、相手の気持ちが全く分からないということもあります。
それは相手が自己開示をしてくれていないのか、自分の感性が足りないのか、確かな原因は分かりませんが、その課題に向き合うことで、人として成長していけるのだと思っています。
ここでは、ある親子の会話から学ぶ、感性を補うコミュニケーション能力をご紹介します。
目次
- 親の想い
- 子の想い
親の想い
この事例に出てくる子どもは、高校生の女の子です。
そして、その母親は毎日お弁当を作っていました。
しかしある日、母親がそのお弁当がゴミ箱に捨てられていることを発見しました。
あなたが母親だったら、どのように思いますか?
きっと、戦後間もない頃に生まれた人にしてみれば「なんてもったいないことをするの」と激怒するかもしれません。
さらに「今はものが豊かになって、色々なことが当たり前かもしれないけど、昔はね・・・」
といって、お説教の1つでもしたくなる人もいるかもしれません。
実際に高校生となれば、親に反発することがあっても不思議ではありませんが、色々な角度から考えれば考えるほど、母には憤りの気持ちが湧いてきたのです。
こんな状況を想像して、あなただったらどのように対処しますか?
このような親子の会話の中で、親のコミュニケーション能力が問われていきます。
大枠の分かれ道は、次の2つです。
①親の想いを子に伝える
②親が子の想いを聞く
この事例では、親が②の選択をすることで、子の想いを知ることができました。
子の想い
「あんた、私がどんな思いでお弁当を作っているか分かっているの。私が小さかった頃は・・・」と、頭ごなしに叱りつけてしまう親もいるでしょう。
しかし、この事例では「お弁当捨てるなんて正直信じられないし寂しい気分になったよ。このことについて自分では悪いと思ってるの?」と娘に問いかけると、娘はうつむいたまま「ごめんなさい」とつぶやきました。
そこで「悪いと思っていても捨ててしまうのは、何か理由があるの?」と聞くと、娘は涙を流しながら次のようなことを言ってきたそうです。
「悪いと思ってるけど、どうしてもお弁当が食べられないの。なんでか分からないけど、コロナの頃から給食とか人がたくさんいる中で食べようとすると、なぜか気持ち悪くなっちゃうの。自分でもなんでか分からないんだけど、そんな気分になるの。どうしても食べなきゃいけない時は、お茶で流し込んでいるんだけど、家に帰ってきてお弁当を残していると、お母さんに怒られるから、相談できなかったの。だから悪いと思いながらも、残っちゃったお弁当をどうしていいか分からず、たまに捨てることがあったの。本当にごめんなさい」
もし頭ごなしに叱りつけていたら、親の気持ちはスカッとしたかもしれませんが、子の想いを知ることはなかったでしょう。
「お弁当を食べずにゴミ箱に捨てる」という行為は、親にとっては許せない行為かもしれませんが、その背景には苦しんでいる娘の想いがあったのです。
そこには思春期に見られるような親への反発ではなく、親に心配をかけさせたくないという娘の優しさがあったのです。
この現象を医学に詳しい人に聞いてみると「会食恐怖症(社交摂食恐怖症)」という医学的な可能性があると教えてもらったそうです。
仕事におけるコミュニケーションでは、気遣いや配慮が前提にあります。
一方で、家族や仲の良い友だちの間では、過剰な気遣いや配慮は必要なかったりします。
しかしそこに甘えてしまうと、大きな落とし穴が待っているのです。
だから、過剰な気遣いや配慮が必要ではない関係において、色々な問題が起きてしまうのです。
その時に、それをピンチと捉えるのか、人として成長するチャンスと捉えるのかで、未来が変わっていきます。
上司と部下、先輩と後輩、親と子、このような力関係が成立してしまう中で、頭ごなしに言えてしまう時には、注意が必要なのです。
そんな親子のような気遣いの必要性が少ない関係の時にこそ、コミュニケーション能力の重要な要素である「問いかける」という技術が重要になってくるのです。
コミュニケーション能力の基本については、こちらもぜひご覧ください。

