上司と部下のコミュニケーションにおいて「伝える」という行為が発生します。
その「伝える」という技術(スキル)が、上司に必要な要素の1つになります。
ではその「伝える」という行為の中で、どんな課題を持って取り組めば良いのでしょうか?
その課題意識を持っている上司と、課題意識を持たずにそれまでの経験のみに基づいて「伝える」という行為を行っている人とでは、部下に対する伝わり方も、本人の成長も大きく変わってきます。
一般的には、上司の方が部下よりも知識も経験もあります。
だから伝える材料をたくさん持っているのですが、その優位性に甘えて「伝える」ことに対して謙虚に取り組めていない上司が多いというのが私の印象です。
目次
- 相手の目線に合わせる
- 伝え方の基本
- 軽視しがちなミス
相手の目線に合わせる
では上司が「伝える」ことに対して謙虚に取り組むためには、どうしたら良いのでしょうか?
その1つのキーワードが「課題を正しく認識する」ということです。
その課題を認識し、目の前の出来事に向き合うことで、人は経験値が上がり成長していきます。
では、上司が部下に「伝える」ことにおいて、意識すべき課題は何でしょうか?
大切な課題の1つが「相手の目線に合わせる」ことです。
伝え方の良し悪しを判断するのは、専門家でも評論家でもなく、目の前の相手です。
だから伝え方の正解は、相手によって変わってくるのです。
では「相手の目線に合わせる」ことにおいて、どんなことを合わせれば良いのでしょうか?
詳しくは、こちら【部下とのコミュニケーションで大切な「レベルを知る」とは】をご覧ください。
伝え方の基本
「相手の目線に合わせる」ことを前提として「伝える」という行為を考える時には、どのようなことに意識を持てば良いのでしょうか?
大切なポイントの1つが、課題を箇条書きではなく、絵や図として体型的に捉えることです。
私は「コミュニケーション能力」と「伝える技術」において、次のような図を頭に描いて課題を意識しています。
この図にある「ストーリーを創る」は、上司として身に付けるべき技術としてとても重要になります。
この「ストーリーを創る」を考える時に大切なことは、終わり方です。
最後に、どのような終わり方をすれば良いかを考えるということです。
具体的に言うと、話が終わった時に、相手がどんな感情になってどのような行動を起こすかを考えることです。
上司として部下に伝えたいことがあるとすれば、それをどうやって話すかということが大切なのではなく、上司が話をした後に、部下がどのように動くかということが重要なのです。
人が頭を悩ませ考えることはとても大切ですが、残念ながら考えただけでは人は変わりません。
考えた後に、いかに行動するかで未来が変わっていくのです。
だから上司が部下の行動を促すために、どんなストーリーで伝えれば良いかを考えることが重要であり、上司のコミュニケーションにおける義務ともいえることなのです。
軽視しがちなミス
ここでご紹介した「伝える技術」を意識して、部下とコミュニケーションを図ることで、上司も部下も成長していくことができます。
しかし、上司として1つ気をつけなければいけないことがあります。
それが、上司と部下のコミュニケーションにおけるタブーです!!
それは、時間を守るということです。
ではその時間とは、どのようなものでしょうか?
もし決められた時間があれば、その時間を守ることは当然のことです。
しかし、上司と部下のコミュニケーションにおいては、時間が決められているということは少ないかと思います。
なぜならば、上司か部下のどちらかが「ちょっといいですか?」という相談や報告があった時に、その延長線上にコミュニケーションがあることが多いからです。
その時に部下が思う許容範囲の時間を想定し、それを超過しないことが大切です。
なぜならば、部下が思う許容範囲の時間を超過しても、それ以降は伝えたいことが伝わらないからです。
その根拠となる「90 20 8 の法則」をご紹介します。
「90 20 8 の法則」とは、人材育成の第一人者であるボブ・パイクさんというアメリカの学者が提唱している人間の集中力に関する法則です。
それぞれの数字の意味ついて、簡単に解説していきます。
【90】
90とは、人間が「理解」しながら話を聞けるのは90分が限界であることを表した数字です。
セミナーなどで90分で区切っているものが多いですが、それはこの法則に由来しています。
【20】
20とは、人間が「記憶」しながら話を聞けるのは20分が限界であることを表した数字です。
例えば、研修で大事なポイントなどを話すことがあると思いますが、20分以上話してしまうと受講者の記憶には残りにくいといわれています。
【8】
8とは、人間が飽きずに話を聞けるのは8分が限界であることを表した数字です。
上司が部下に話す際に、この8分を意識することが1つ大切な境界線になります。
人間が、記憶しながら話を聞けるのは20分ですが、本当に集中して話を聞けるのは8分が限界なのです。
そして、上司と部下のコミュニケーションにおいて、どうしても時間をかけて伝えたいことがあるならば、一方的な話ではなく、対話を意識することが大切です。
なぜならば、対話をすることで、相手の集中力も意識も保つことができるからです。