これは、とある会社の社員食堂でのお話です。
この会社では、毎日手作りの食事がランチとして振る舞われています。
それだけでも本当にありがたいですし、羨ましい限りですよね。
社員食堂ができた当初は、社員さんもみんな感謝の気持ちを声に出していましたが、少しずつ慣れてくると、その感謝の気持ちが薄れてきてしまっていました。
それがどのように現れるかというと、発する言葉に現れてくるのです。
言葉遣いに気をつけなければいけませんが、言葉遣いだけを気をつけるのもまた難しいものです。
だからこそより大切なことは、感謝の気持ちを忘れないことですね。
ここでは、職場での人間関係が拗れてしまった事例と、そこから学ぶコミュニケーション能力のポイントをご紹介します。
目次
- 些細な会話
- 謝ってはみたものの
- 人間関係のポイント
★些細な会話
ここでは、次のようなやりとりがありました。
登場人物は、次の2人です。
(管理職のSさんと、食堂でご飯を作ってくれているAさんです)
Sさん:あれっ、今日は1品少ないんじゃないの?
Aさん:そうですか!?
でもその言葉の裏には、次のような気持ちがありました。
今日はいつもより人が多いし、食材が少ないので仕方がないのです。
その中で、最高のものは準備しているつもりです。
Sさん:あれっ、今日はデザートはないの?
Aさん:すみません、今日はないんです。
その言葉の裏には、次のような気持ちがありました。
いつもいつもデザートがあるわけじゃないんです。今までもデザートがない日があったじゃないですか。
Sさん:あれっ、今日はお客様がいるから、品数が多いね。
ここでAさんは、あからさまににムッとした表情をしてしまいました。
それを見て、Sさんは「お客様の前でそんな顔をするのは、プロとして失格だよ」とコメントをしたのです。
しかしそれからAさんは、Sさんとの距離を置くようになってしまいました。
このやりとりを聞いて、あなたはどう思いますか?
このような職場での人間関係ってきっと少なくないですよね(笑)
★謝ってはみたものの
このような職場での人間関係においては、まず謝ることが大切です。
Sさんはとても素直な人で、Aさんの反応を見て、自分にも至らないところがあったと思い、こっそり次のように謝りました。
この前は「プロとして失格」のような言い方をして悪かったね。
もしまた納得いかないようなことがあったら、遠慮なく言って欲しいけど、お客様の前であんな態度はやっぱりいけないから、Aさんも気をつけてね。
それを受けてAさんも、次のように返答しました。
私も上司に対してだけでなく、お客様に対しても失礼な態度をとってしまったと思います。
すみませんでした。
しかし、Aさんの本音は別なところにありました。
決して、プロとして失格という言い方に腹が立ったわけではなかったのです。
ではどういうところに腹が立ったのかというと・・・。
次のようなコメントが届きました。
口頭でも謝ってもらい、メールもいただいたのですが、その内容もちょっとズレていたのでうまく返せませんでした。
お客様がいるからとかではなく、その日の人数、オペレーションなどで限界値は違いますが、日々その時に出せる全力でやっているので料理の優越、クオリティーに違いをつけていないつもりでやっているので、どうしても納得いかなかったです。
大人気なくて、すみませんでした。
もう少し、器の大きい人間を目指します。
★人間関係のポイント
このやりとりを踏まえ、コミュニケーション能力という観点で課題を挙げるとすれば、次のようなポイントになります。
①冗談として伝わっていない
Sさんは「あれっ今日は1品少ないんじゃないの?」とか「あれっ今日はデザートはないの?」というコメントを冗談で言ったつもりだったのですが、残念ながらこれは冗談として伝わっていなかったのです。
その原因は、Sさんの言い方かもしれないし、Aさんが忙しくて冗談として受け止める余裕がなかったのかもしれませんが、冗談はしっかりと相手を笑顔にさせるような言い方でないと要注意だということです。
②相手のリアクションに気づいていない
Sさんは、先程の冗談として受け止めていないことも含め「プロとして失格」というコメントに反省するまで、相手の変化に気づいていなかったのです。
Sさんが、少しでもAさんの変化に気づいていれば、AさんがSさんを避けるほどのことは、なかったかもしれません。
③コミュニケーションを避けてしまった
職場における人間関係において、コミュニケーションを避けてしまうことが最もいけないことかもしれません。
マザーテレサさんも「愛の反対は無関心」と言っています。
本来不満に思うことがあれば、直接言えれば良かったのですが、残念ながらこの時Aさんは言えなかったのです。
なぜならば、SさんとAさんの関係は、上司と部下だったからです。
ということは、何でも言いあえる関係ではなかったのです。
そのことを踏まえると、Sさんには2つの課題があります。
1つは、相手が言いやすいような人間関係をつくることです。
もう1つは、言いにくい人間関係だということを踏まえて行動することです。
仕事においては上司と部下、家庭においては親と子、部活動などにおいては先輩と後輩という関係は、ひょっとしたら言いにくい人間関係になりやすいかもしれません。
そして職場における人間関係においては、やはり上司のコミュニケーション能力は大切ですね。
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