「問いには問いで返す」という言葉をご存知でしょうか?
私は、この言葉を経営コンサルタント時代に、交渉に関する相談をする中で、当時の先輩から教えてもらいました。
ここでのコミュニケーションのコツは「間違った問いに正しく答えるな」ということです。
詳しくは、こちら「間違った問いを見極める①」をご覧ください。
ここでは、このことがよく分かる事例をご紹介します。
コミュニケーション能力や交渉に対してコツを知りたい方には、必見です。
とあるリサイクルをしている会社では、同業者への労働者派遣事業を行っていました。
そして労働者を派遣すると、派遣受け入れ先の企業から喜びの声と共に、新たな要望もいただくようになりました。
それは「現場での人手不足に関してはとても助かっていますが、さらに販売や仕分けに関する専門知識がもう少しある人に来てもらうことはできますか?」というものでした。
あなたが派遣元の責任者だとしたら、どのように思いますか?
この時に、派遣元の責任者は次のように言いました。
「それって違くないですか?派遣契約でいくと、そこまで求められるのっておかしくないですか?そこまで求められたら派遣できる人が限られて困ってしまいます。だからそこまでの人を派遣するのは難しいということを伝えることが大切じゃないですか?」
あなたは、どう思いますか?
これがまさにコミュニケーションのコツの1つである「間違った問いに正しく答えるな」ということです。
整理してご説明します。
この時の問いは「現場での人手不足に関してはとても助かっていますが、さらに販売や仕分けに関する専門知識がもう少しある人に来てもらうことはできますか?」というものです。
そして、答えようとしている内容は「できません(NO)」というものです。
これが「間違った問いに正しく答えるな」ということであれば、どうしたら良いのでしょうか?
まずは問いの背景を考えることが重要であり、言い方を変えると「相手(お客様)の真の欲求を知る」ということです。
この時の真の欲求とは、何でしょうか?
それはズバリ「もっと利益を出したい」ということです。
「今以上にもっと利益を出したいので、人手不足を解消したい」ということが、派遣を受け入れるスタートでした。
そして、派遣を受け入れていく中で、専門知識の高い人が来てくれ、それが売り方にも好影響が出て、利益にも繋がっていったのです。
だから「そんな人が来てくれたいいな」と思ったのです。
ただ、それだけのことなのです。
このことを踏まえて「現場での人手不足に関してはとても助かっていますが、さらに販売や仕分けに関する専門知識がもう少しある人に来てもらうことはできますか?」という言葉を受けて「問いには問いで返す」ことが大切なのです。
具体的には、次のようなことです。
「ありがとうございます。それは人手不足の解消だけでなく、もっと利益に繋げられるような情報があったら嬉しいということですか?」というように問いを投げればいいのです。
そこで「はい、そうなんです」という答えをもらうことができれば、今度はこちら側に「問う」というバトンが回ってくるのです。
そこで、次のような「問い」を投げかけることができたら、どうでしょうか?
・ご要望を教えていただき、ありがとうございます。もう少し詳しく聞きたいし、今度話を聞きにいっていいですか?
→ここで「YES」の返事がもらえると、アポを得ることができます。
・専門知識も持ち合わせ社員となると、限られたメンバーになるので、時給単価を上げる提案をしてもいいですか?
→ここで「YES」の返事がもらえると、売上単価(時給アップ)を上げる提案をする機会を得ることができます。
・専門知識をお伝えするだけでなく、販売の仕方などでも利益が変わっていくので、一度こちらで人の派遣以外にもできることを提案してもいいですか?
→ここで「YES」の返事がもらえると、コンサル提案をする機会を得ることができます。
これは一例ですが、このような問いを投げかけると「現場での人手不足に関してはとても助かっていますが、さらに販売や仕分けに関する専門知識がもう少しある人に来てもらうことはできますか?」という問いに対して、「YES」もしくは「NO」で答えなければいけないというコミュニケーションの概念が全く変わってくると思います。

