今でも記憶に新しい2023 World Baseball Classic (WBC)ですが、準決勝の日本対メキシコ戦は覚えていますか?
1点ビハインドで迎えた9回の裏に、大谷選手が2塁打を放ち、吉田選手がフォアボールを選んだことで、ノーアウト1塁2塁という逆転サヨナラ勝利のチャンスが訪れました。
そこで次の打席は、村上選手!!
村上選手は、史上最年少で3冠王を取るなど、日本を代表するバッターですが、このシリーズは本調子ではなく、この日も3打席連続三振に倒れていました。
私はテレビを見ていて「ひょっとしたら代打もあるかもしれない」と思っていました。
しかし栗山監督はコーチを通じて「ムネに任せたぞ」と伝え、村上選手も見事にその期待に応え、逆転サヨナラ勝ちをしたのです。
(その後、決勝戦でも勝って、日本が優勝したことはもちろん覚えてますよね!?)
今でもこの場面を見ると胸が熱くなりますが、こんな信頼関係が上司と部下との間にもあると理想ですね。
しかし、目の前の日常はそんなに甘くはないことも事実です。
目次
- 信じるということ
- 信じて任せず
信じるということ
「私はあなたを信じているよ」というメッセージが相手に伝わると、その人は勇気が出てやる気に満ち溢れ、自分自身の存在価値を感じられるでしょう。
それくらい「信じる」というメッセージには力があります。
一方で「信じる」ということは、そんなに簡単ではありません。
特に上司が部下を「信じる」ということは、出来そうで出来ないことかもしれません。
なぜならば、基本的には上司の方が部下よりも、知識や経験が上回っていることが多いからです。
そのような時は「不正解の価値」を理解しておくことが大切です。
つまり、一般的には「正解」を選択した方が良いことが多いですが、時には「不正解」を選択することの方が、価値がある時もあるということです。
例えば、部下がAとBのどちらを選択すれば良いかを迷っていて、それを上司であるあなたに相談してきたとします。
この時に、上司として大切なことは・・・
部下がどちらの答えを選んだとしても、その意見を尊重するのかしないのかを決めておくことが大切です。
「そんなこといちいち考えてないよ〜」という人がいたら、それを考えるだけでも部下との会話が楽しくなりますよ!!
当たり前ですが、部下の意見を尊重しないという場面もあります。
しかし、もし尊重するというのであれば、100%信じることが大切です。
100%信じる時には、上司であるあなたが、部下に対して「自分ではAとBとどっちを選びたいと思っているの?」と聞いたら、どちらの答えだとしてもそれを受け入れるのです。
彼にあなたが正解はAだと分かっていても、部下がBを選んだ時に「本当にいいの!?」とネチネチと言ってみたり「どうなっても知らないからね!?」と脅迫するような言い方をしては絶対にいけません。
(これは親子の会話でも同じことが言えます)
もし自ら行動した部下が、不正解であるBを選択したならば、教訓を得られるでしょう。
逆に部下が、正解であるAを選択したならば、自信をつけるでしょう。
たまに「自分ではAとBとどっちを選びたいと思っているの?」というような投げかけを部下にする時に、次のように言う上司がいますが、これもNGです。
「僕は正解が分かっているけど、言わないよ」
「私が正解を言ったら意味がなくなるから、考えてみて」
このような言い方をする上司には、人の意見を尊重するという気持ちが欠けているのです。
私が経営コンサルタントの仕事を通じて出会った経営者の中で、優秀な方はこういう言い方を一切しません。
つまり、信じるということは、100%相手を尊重するということでもあるのです。
「不正解の価値」については、こちら「上下関係の正解はひとつじゃない 〜不正解の価値〜」もぜひご覧ください。
信じて任せず
組織において、最終責任はトップにあります。
会社であれば社長がいて、部門であれば部長という役職があります。
このような役職は、組織における責任の重さを表しています。
ではそんな組織において、上司が常に部下の意見を信用し、部下の意見を100%尊重していたらどうなるでしょうか?
それはもう、部下頼みの組織になってしまいます。
そんなことが「おかしい」ということは誰でも分かるかと思います。
では、どうすれば良いのでしょうか?
「部下を信じない」ということでしょうか?
そんな時は「信じて任せず」を意識すれば良いのです。
この言葉を聞くと、頭の中に「?マーク」が出てきてしまう人が何人かいます。
つまり信じるけど、全ては任せないということです。
もう少し分かりやすい言い方に変えてみると、それは「任せる範囲」を明確にすることです。
部下の意見を尊重し100%信じても良い領域はどこまでなのかを、上司は明確にしておく必要があります。
この領域を曖昧にしていると、上司も「信じているよ〜」なんて言っておきながらも不安になってしまい、その言葉に重みがなくなってしまいます。
このように「任せる範囲」を明確にすることで、その範囲内であれば心から相手の意見を尊重することもできるし、結果がどうなろうと部下の行動を見守ることができます。
仮にその範囲内で部下が失敗したとしても、それは上司が尻拭いをすれば良いのです。
当たり前のことですが、上司が部下に対して「全てを信じるし全てを任せたよ〜」なんていうことは、あり得ないのです。
だから「任せる範囲」を明確にすることで、部下を「100%信じて良い領域」が見えるようになると、信頼関係が生まれていくのです。
そして何よりも、上司は「任せる範囲」の領域を決める時に、部下の力量や性格を見ながら判断していくことが大切になります。
ここが部下を持つ上司として、腕の見せ所の1つです。
コミュニケーション能力の基本について興味があれば、こちらもぜひご覧ください。