「べき論」とはいわゆる「こうあるべき」という論調のことですが・・・。
「べき論」というのは常識であったり、自分自身の軸となる考え方であったり、人を支えてくれるものであったりします。
しかし一方で「べき論」に固執してしまうと、柔軟な発想や考え方を止めてしまうことになるかもしれません。
正論とは「べき論」で語れますが、やっぱりバランスが大切なのです。
そして思うことがもう1つ・・・
正論と言われる「べき論」だけでは、人は動かないということです。
そんな簡単な事例をご紹介します。
目次
- 一般的な「べき論」
- 心根(こころね)
- 伝え方の工夫
一般的な「べき論」
「べき論」といえば、こんなことでしょうか。
- 〇〇をするべき
- 〇〇を守るべき
- 〇〇を選択するべき
例えば、会社組織においてこんな「べき論」があります。
- 稼ぐべき
- お客様の立場に立つべき
- 指示には従うべき
あげればキリがないでしょうが・・・。
この「べき論」に、どうやってそこにいる人の個性を乗せていくかで組織の器が決まっていきます。
そして組織においては、次のような「べき論」もあります。
「自分の部門だけでなく、会社全体を考えなければならない」
この「べき論」はまさに正論です!!
会社が傾いてしまっては、部門も個人もありません。
このことは「べき論」として、100人いたら100人が納得するのではないでしょうか。
しかし100人中、何人の人がこの「べき論」に基づいて仕事をしているでしょうか?
心根(こころね)
ある会社のY課長の事例を紹介します。
「自分の部門だけでなく会社全体を考えなければならない」と言われ、頭では100%理解していましたが、実際の仕事ではそのようにはなっていませんでした。
どういうことかというと、自部門(自分が所属する部門)の実績を優先して仕事をしていたのです。
つまりこういうことです。
「商品A」を販売すると40万円の売上になり、「商品B」を販売すると30万円の売上になります。
これを見たら、当然「商品A」を販売した方が良いのですが、Y課長はなぜか「商品B」をお客様に勧めていたのです。
なぜでしょうか?
それはなぜかというと「商品A」を販売すると自部門の実績が20万円しかつかないのですが「商品B」を販売すると自部門の実績が30万円になるからです。
会社としては「商品A」を販売していきたい方針でしたし、Y課長もそのことは「べき論」として100%理解していましたが、心根は違っていたのです。
お客様に対して「商品B」をお勧めしているその心根とは、まず自部門の目標を達成させたいし、会議で責められるような状況はまず避けたいというのが心根でした。
「何を器の小さいことを言っているんだ~」と激高しても、心根は変わらないのです。
こんな時に「べき論」をもとに熱く語る人がいますが、残念ながらこの状況で「べき論」をいくら熱く語っても、心には響きません。
なぜならば「べき論」は100%理解しているからです。
伝え方の工夫
ではこんな時にどうやって伝えたら良いのでしょうか?
それは「べき論」ではなく、心根を満たすように伝え方を工夫することです。
例えば今回の事例であれば、そんなに難しいことではありません。
「商品A」を販売したら、Y課長の部門でも40万円の実績にしてあげればいいのです。
もちろん管理会計上の話ですが・・・。
「べき論」としての理解ができていても、思考が変わらないのであれば、とりあえず行動を変えるように促せばいいのです。
そして行動を変えてから、結果を共有します。
その結果とは全体としての結果であり、Y課長の実績です。
マザーテレサさんの有名な言葉がこちらです。
「思考」に気をつけなさい、それはいつか「言葉」になるから。
「言葉」に気をつけなさい、それはいつか「行動」になるから。
「行動」に気をつけなさい、それはいつか「習慣」になるから。
「習慣」に気をつけなさい、それはいつか「性格」になるから。
「性格」に気をつけなさい、それはいつか「運命」になるから。
この言葉では「思考」→「言葉」→「行動」→「習慣」→「性格」→「運命」という順番で書かれています。
しかし実際のビジネスでは、必ずしもこの順番通りにいかないこともあります。
そんな時こそ「べき論」にこだわらず、取り組む順番を変えることも必要です。
行動を変えてから、思考を変えるというよくある改善事例です。
例えば子供への躾(しつけ)は、いちいち理屈を説明することなく「○○しなさい」ということも多いかと思います。
思考の理解よりも行動の変化を先に促し、その行動を習慣化することで思考を変えていきます。
「べき論」は大切ですが、柔軟な使い方ができないともったいない結果が待っていることもあるのです。
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