「切り札温存の法則」という言葉は、私がプロスポーツ選手を目指しているときに知ったものです。
これはまさに交渉のコツであり、切り札は先に見せるなということなのです。
交渉において大切なことは、自分の切り札が何かを把握することと、それをどのタイミングで使うかということです。
交渉は人を相手にすることなので、臨機応変な対応が求められますが、それ以前に自分がイメージを持って交渉に臨むことが大切です。
目次
- 切り札温存の法則とは
- 温存しない事例
- タイミングを計る
切り札温存の法則とは
切り札温存の法則とは、その名の通り「切り札は先に見せるな」ということです。
これは切り札があるという前提の話ですので、切り札がないと思っている人は、それをつくることが必要です。
交渉における切り札は、人それぞれです。
切り札は「トーク」という人もいれば「資料」や「動画」などの見せるものという人もいるでしょうし「進め方」や「手法」という人もいると思います。
事前に認識している切り札を、交渉の場で相手の立場に立ってアレンジすることで、クロージングの決定率は上がっていきます。
その決定率を上げるためにも必要なことが「切り札は先に見せるな」ということです。
切り札をすぐに使うのではなく、使うタイミングを計ることが大切であり、ちなみに最も良い交渉は、切り札を使わずに目的を達成するというものです。
勝負の世界でいうと、切り札を使わずして相手に勝つというイメージです。
これって最強ですよね(笑)
温存しない事例
営業マンであるMさんの事例をご紹介します。
Mさんは担当している見込み客から次のような電話をもらいました。
「このサービスに興味があるので、一度資料を送ってもらえますか?」
嬉しい電話ですよね。
見込み「大あり」って思っちゃいませんか??
Mさんは「はい、かしこまりました!!」と言って、早速資料を送り、テンションが上がっていました。
しかし、残念ながらこの見込み客は成約につながりませんでした。
なぜなのでしょうか?
これは見込み客に本音を聞いてみなければ分かりませんが、切り札温存の法則という観点からも、失注の原因は見えたのです。
それは「このサービスに興味があるので、一度資料を送ってもらえますか?」という問いかけに対して「はい、かしこまりました!!」と言って、切り札となる資料を送ってしまったことです。
そしてその資料を送った後に、サービスの大切なポイントを電話で細かく説明し、本人はクロージングをしたつもりでした。
その時のお客様の答えは「ありがとうございます。一度検討させていただきます」というものでした。
Mさんは「これは良い返事がもらえそうだぞ〜」と期待に胸を膨らませていましたが、残念ながら成約には繋がりませんでした。
電話で「検討させていただきます」と言われたら、基本的にそこで終わりです(笑)
単価の低い商品であれば、成約の可能性はあります。
むしろ、交渉の回数が少ない方が成約の可能性はあるかもしれません。
だからLPと言われる「ランディングページ」をしっかりとつくることが大切です。
しかし単価の高い商品や、形の見えないサービスなどであれば、成約になる確率はほぼないでしょう。
タイミングを計る
ではなぜ「はい、かしこまりました!!」と言って、すぐに切り札となる資料を送ってはいけないのでしょうか?
それは、切り札だと思っていた資料が切り札にならないからです。
では、なぜ切り札にならないのでしょうか?
それは大きく2つの理由があります。
①切り札となるかどうかの判断材料が不足しているから
つまり切り札として使えるかどうかが、まだ分からない状況にも関わらず、切り札だと思って使ってしまったのです。
言い換えれば、見込み客の情報が不足している状況では、間違いなく切り札は温存しなければいけないのです。
だから「一度資料を送ってもらえますか?」と言われたら「かしこまりました。ちなみにどんなところに興味を持っていただいたのですか?」と「問いには問いで返す」ことが必要なのです。
②お客様は一度にキャパシティーを超える情報をもらっても判断できないから
人はキャパシティーを超える情報をもらうと、その場で判断ができなくなってしまいます。
なぜなら、キャパシティーを超えているので、後で時間のある時に頭を整理して、時間に縛られずに考える必要があるからです。
つまり、切り札が切り札にならないのです。
こんなもったいない切り札の使い方はありませんし、何よりも切り札だと思っていたものが切り札でも何でもなくなってしまうのです。
だから「切り札は先に見せるな」なのです!
そしてここで切り札を使ってしまったら、その後にクロージングする材料がなくなってしまいます。
だからその時点では、切り札は温存し、適切なタイミングを計る必要があるのです。
このように交渉において、切り札を自覚せず、さらに切り札を使うタイミングを間違ってしまうと「交渉成立」というゴールが訪れなくなってしまうのです。
他の事例に興味があったら、ぜひこちら「相手に喜ばれる交渉術の5ステップ」もご覧ください。