「問いには問いで返す」という言葉は、私が経営コンサルタント時代に先輩から教えてもらったものです。
これは交渉において重要な要素であり、常に「問う側が主導権を握っている」と教えられました。
これを意識すると、その意味を実感しますし、交渉術も向上していくという手ごたえを感じられます。
詳しくは、こちら「交渉術の仕組み化② 〜問う技術の重要性〜」をご覧ください。
このように「問いには問いで返す」という言葉は交渉術として教えてもらったのですが、それ以外のことにも当てはまりますし、大切であることを実感しています。
これは普段の会話におけるコミュニケーション能力という観点からも、とても有益なので、事例と共にご紹介します。
目次
- 力関係を伴う会話
- 会話を進めたい時のセオリー
力関係を伴う会話
会社や家庭で、次のような会話を聞くことはありませんか?
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Aさん:この前の案件について、次のようにしようと思うのですが、どうでしょうか?
Bさん:でも、それってリスクに関する側面が全く抜けてるんじゃない?
Aさん:確かにおっしゃる通りです。
Bさん:前にも言ったと思うけど、希望的観測だけじゃうまくいかないよ。こんな考え方でうまくいくと思ってたら、そんな甘い世界じゃないぞ。
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きっと誰でも、このような場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか。
この会話がもし成立しているとすれば、その背景には力関係があります。
具体的には、BさんがAさんよりも力があるという前提条件がないと成立しない会話となります。
しかし、その前提条件があったとしても、この会話の延長には、いつしか双方向のコミュニケーションがなくなっていきます。
つまり、万人に対して通用するコミュニケーション能力ではないということです。
会話を進めたい時のセオリー
では次に、万人に対して通用するようなコミュニケーション能力をご紹介します。
そこには、2つのポイントがあります。
まず1つ目は「受け入れる」ということです。
これを先程の事例と共にご紹介すると、次のようになります。
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Aさん:この前の案件について、次のようにしようと思うのですが、どうでしょうか?
Bさん:なるほど〜面白いね。ちなみにこれは誰が考えたの?
Aさん:実は、〇〇さんが考えたのです。
Bさん:そうなんだね〜。自分にはちょっと出てこないアイディアだし、素晴らしいね。
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簡単にいうと、こんな感じです。
きっとAさんも、自分の意見が受け入れられたと思い、気分が良いのではないでしょうか。
2つ目のポイントは「問いかける」ということです。
これができることで「問いには問いで返す」というコミュニケーション能力が発揮できます。
先程の事例の続きと共に、ご紹介します。
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Bさん:ちなみに、この提案を実行しようと思ったら、何か不安に思うことはあるの?
Aさん:そうですね。今回は自分たちのアイディアを発表したのですが、実際にやるとなると「本当にこれでいいの?」という気持ちにはなります。
Bさん:それはどんなところに「いいの?」って思うの?
Aさん:まずはお金ですかね。このアイディアに、本当にお金を使ってもいいのかというところです。
Bさん:Aさんのいうお金というのは、費用対効果ということかな?
Aさん:簡単にいうと、そういうことです。
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こんな感じですが、いかがでしょうか?
力関係に頼ったコミュニケーションと決定的に違うことは、会話が続く(弾む)ということです。
さらに、このように「問いかける」ことで、相手に気づきを与えることもできます。
そして、気づきを与えることで、さらに生まれるメリットとは、その人に考える機会を与え、その結果、理解が深まりそれが記憶に残り、さらに自主的な行動を引き起こしやすくなるということです。
おそらく誰でも、自分のコミュニケーション能力の課題を理解して取り組めば、このような会話ができるようになります。
しかしそれができていないとすれば、そこには大きく2つの要因があります。
1つは、コミュニケーション能力の課題を理解していないことです。
そしてもう1つが、力関係に頼りコミュニケーションにおいて慢心があるということかと思います。
コミュニケーション能力の向上においても、謙虚さが大切ですね。
コミュニケーション能力の基本については、ぜひこちらをご覧ください。